ようやく初夏の気配が感じられるようになってきました。

 いつもこの時期になると、街の木々や道端に咲く野花の若々しい生命力に驚かされます。
 旅と思索社も、3年前の5月1日、新しい命みなぎる夏の訪れとともに産声を上げました。

 ここまで来られたのも読者の皆様をはじめ、一人出版社という存在に興味を持っていただき、励まし、手を差し伸べてくださった皆さまのおかげです。まことにありがとうございました。

 一人出版社として立ちゆくために、これまでの出版社にはない、また、できないやり方をいろいろ模索していますが、まだ答えは出ていません。

 けれども、分かってきたこともあります。
 本はやはりそこに思いを込めたいものがきちんとあるからこそ、数をこなせばいいというものではなく、じっくり時間をかけて一冊一冊作り上げ、世の中に送り出していくというやり方だってあっていいということを。

 これは出版社としての考えではなく、わたし自身の生き方かもしれません。
 急いで通り過ぎるよりも、立ち止まり、味わい尽くす生き方。だからこそ、本づくりにもそのような思いをこめたいと思います。

 出版社の資金繰りは自転車操業だ。一度出したら採算を考えて、継続的に決まったボリュームで本を出し続けなければならないーー。この業界にいる人はそれが皆常識だと思っています。わたしもその考え方は間違っているとは思いません。

 それをなんとか変えて、あらたな出版社の在り方を見出していこうという挑戦と実験が、旅と思索社の使命だと思っています。石の上にも3年、旅と思索社の取り組みは、さまざまな出会いに支えられて、確かな温もりを感じられるようになりました。

 また新しい季節の始まりです!
 人間に与えられた限られた時間をじっくり味わい、本という形で命を吹き込み続けたい思います。

 これからも旅と思索社をどうぞよろしくお願い申し上げます。

  合同会社旅と思索社
  代表社員 廣岡一昭